利尻岳 2001.08

 香深フェリーターミナルから 分ほどで、利尻島鴛泊港に到着する。利尻岳の日帰り登山には時間が遅すぎるので、レンタカーで島内観光をすることにした。ターミナル前のレンタカーはどの店もすでに、予約やレンタル中で(自転車でさえも)借りられる乗り物はなく、2時間待ちの状態だった。仕方なく近くの土産物屋などをぶらぶらしたところ、1時ごろには軽自動車が借りられた。利尻島はバスでも一周できるが、連絡が悪く、時間がもったいない。
 とりあえず、島を右回りに観光巡りをしてみることに決めた。姫沼からオタトマリ湖、沼浦湿原、仙法志のアザラシをみて、沓形港に向かう。鬼脇への途中の道端から眺めた利尻岳が大変素晴らしく印象的だった。同時に、あんなところまで登るのかと不安な気持ちに駆られた。なにせ、海抜0mから1700mまでを一気にのぼりきらなければならず、そのような登山は久しく行っていなかったのである。沓形から峠道を入っていくと見返台にある沓形登山道入り口に行けるので、展望に期待しながら自動車で向かってみた。しかし、天候はあいにく曇り、駐車場には大変立派なトイレがあった。帰りの峠道で、下山途中の若い女性がヒッチハイクを行っている。聞けば、礼文行きのフェリーに間に合いそうもないということ。私は昨日まで礼文島を散歩していたので、互いに登山の情報を交換し、沓形の港で別れた。
 夕方5時過ぎに利尻北麓野営場に到着。その日は、予め予約しておいたケビンに宿泊の予定だった。管理人のお兄さんは米倉斉加年似(焼肉ジャンのCMの人)の、心遣い温かな人だった。利尻登山についてのアドバイスをいろいろいただいた。さすがに登山道の状況について詳しく大変参考になった。また、登山道には、水場・トイレが一切無いので、気をつけろとのこと。携帯トイレもサービスでいただいた。ここの野営場は、キャンプサイト無料、ケビン1500円、水場があり、清潔なトイレも完備している。そして、管理人がうわさにたがわず素晴らしい人と、まさにいうことなしのキャンプ場だ。次の日、ごみ場を掃除する管理人さんを見かけたが、隅々まで丁寧に掃き掃除しててきぱきとごみをまとめる姿に、自然を愛する人柄が伺えた。明日は早立ちなので早々に眠りに着いたが、同時に雨音も徐々に強くなってきた。
 次の日は6時に目が覚めたが、天気は雨。予報では「雨のち曇り」であり、雨の中を無理して出発することもなかろう、と考え、二度寝した。次に目覚めたのは八時。出発するにはキリギリの時間である。相変わらず強い雨が降っていた。登山を中止しようかとも考えたが、このまま引き返したら次ぎ来るのは何年後になるか分からないことを考えると、答えはやはり出発しかなかった。急いで朝食を済ませ、カッパを着込み、野営場を後にした。

鴛泊コース(野営場〜利尻山避難小屋〜山頂〜野営場)
 10分ほど歩くと日本百名泉の甘露泉に着く。ここで水を1.5リットルのポリタンクいっぱいに補給した。第一見晴台までは、針葉樹林帯を抜ける緩やかな登り。第一見晴台から第二見晴台までは、七曲といわれるジグザグの急坂。ダケカンバが自然のトンネルを作っているようで、雨が降っていたが結構快適に登れた。1時を少し回ったところで、長官山を過ぎて、少し下ったところにある赤い屋根の避難小屋についた。どこかの山岳部らしい7人ほどのパーティーが先客でいて、中は騒がしかった。床は土間で、壁の片面が二段ベットのようなつくりの小さな小屋であった。私は、その二階に上り、お湯を沸かして遅い昼食をとった。やはり、水場やトイレは無かったが、小屋の外にテント式の簡易トイレがありその中で用は足せた。小屋の中にも携帯トイレが入った箱が置いてあり、登山者は自由に使うことができたが、ここにはやはり麓からトイレを持参したい。小屋の近くも、事前の情報ではごみにあふれかえっていると思われたが、きれいに掃除してあり、地元の人の苦労が伺われた。雨もまだやむ気配が無く、これでは頂上に立っても何も見えないだろうと思い、仮眠がてら小一時間ほど休憩を取った。このまま一泊もやむをえないだろうと考え始めていた。
 しばらくすると、外は小降りになっていた。山頂に着くころは晴れるだろうと思い、急いで再出発した。頂上直下はかなりのガレ場であり、斜度も相当あり非常に登りづらい。岩の陰にリシリヒナゲシがひっそり咲いていたが、その姿は強風にあおられ白い頭を苦しそうに傾けていた。最後の急坂を登りきると頂上に到着。素晴らしい晴天と360度の大雲海。北西に雲が大きくうねっている部分があったが、それは礼文島の気流の影響だと思う。近くに名物のローソク岩がガスの合間に見え隠れしていた。それにしてもこれほど素晴らしい雲海を私はいままで見たことがなかった。頂上には私たち二人のパーティ以外には誰もいなかった。その日、山頂からこの素晴らしい景色をみたのは我々だけだと思う。みんな天気を心配して、早朝から登りそうそうと下山しているのだ。その方が確かに正解だが、のんびりした性格が幸いしたのか、おかげで最上の展望を味わえた。
 それにしても、山頂の崩落ぶりはひどい。祠などはワイヤーで四方からつるされ、ほとんど宙に浮いている。頂上も四畳半ほどの広さで、西側は崖になって切れ落ちている。このままでは数年後には山頂に立てない山となってしまうのではないだろうか(すでに最高点の南峰は危険で近づけない状態である)。ソールの硬い登山靴での利尻岳登山はやめたほうがいいと思う。
 下山は、夕焼けの雲海を眺めつつゆっくり行った。野営場に戻ったのは7時をゆうにまわり、日もとっぷり暮れた頃であった。その晩もケビンの予約を行っておいたが、管理人さんはすでにいなく、管理等のガラスに鍵が貼り付けてあった。その張り紙には「お疲れさま」の手紙も添えてあった。

(リシリヒナゲシ)(ローソク岩)  (避難小屋からの眺め)(沓形分岐付近)(頂上からの雲海)(利尻岳全景)

(第二見晴台から夕焼けの礼文方向をのぞむ)

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